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■■■ ほかの絵はこちらから 坂井 三郎 著 「大空のサムライ」 読んだ事ありますか?
この本は、昭和42年刊行の本ですが、2011年に改訂版が出たのを期に、この本の存在を知りました。
各国の人々にも読まれ100万部突破のベストセラーとなった本だそうです。
当時のゼロ戦は、その機動性能は世界一であり、それを操縦するパイロット達も優秀だったことから無敵とまで言われていた。
敵国のパイロット達は、見つかれば容赦なく襲い掛かる魔物の様に恐れ、それを操る日本人は、好戦的な血も涙もない悪魔の様に考えていたそうですが、この本を読んだ敵国の戦士達は、日本人も我々と同じ様な気持ちで戦い、思い悩み、父母や兄弟の事を思い、その住む祖国の為に、必死で戦っていたのだということを知り、多くの手紙が届いたそうです。
この本は、その青春を戦いの中に置かれ、散って行った多くの若い戦士たちと、全てをゼロ戦と戦いに賭け、幾度もの戦で、負傷しながらも、「撃墜王」と呼ばれた著者の生い立ちから、幾多の決死の空中戦の様子、九死に一生を得た話などが綴られた記録です。
中でも一番印象に残ったのは、ある戦闘で頭部を打たれ、必死で帰還した様子が克明に記録されている。頭部をバットで殴られた感じがして、意識を失いそうになった時、母の声で目覚めた事、だらだらと流れる血の様子、風防が吹き飛ばされた強い風圧の中で、何とか止血しようとする様、ぎりぎりの燃料、空想の中で書き上げる小説家では、絶対に描ききれない生の凄さ、まるで映像を見ているかの様にリアルに伝わってきます。
そして、戦に勝つ為の様々な訓練の凄さ、
当時まだレーダーが搭載されていない戦闘機では、パイロットの命は眼であり、如何に早く敵機を発見するかであったと、その為昼間に星を見る訓練をしたそうです、普通の人の感覚では、星は夜空に輝くもので、昼間は見えないものと言う概念を持っているが、現に星は天空に存在している、それを見ようというのですから。来る日も来る日も地面に寝そべって大空を眺めるという日が続く、その訓練のおかげで見えたと書いてあります、そしてそれが、いち早く大空の彼方に存在する敵機の機影の発見に役立ったと記されています。
又、ゼロ戦から機銃を打つ際、照準器の中に敵機がすっぽり入っている状態で打っても当たらない、敵はすごいスピードで移動しているので、その移動先を読んで、そこに打ち込まないと当たらない、その為の訓練として、飛んでいるトンボを捕まえる訓練をした、トンボの移動先を読んで、そこで手を握ると、手の中にトンボが入ってくると、毎日が戦いで勝つための訓練、自己研磨の日々、すごいとしか言いようが無い。
「必死で頑張ります」なんて、日常の会話のなかでよく交わされるが、ほんとに「必死」で頑張ってるのか、と思ってしまう。
著者が、本書の冒頭の「著者から読者へ」の中の最後にこう記しています、
「平和と科学の進歩した今日、この記録がどれほどの価値があるのか、私には分かりませんが、あの時代の若者たちが、祖国を守る為に示した精神力が、現代の日本人、とくに今日の若い人たちの気迫の上に訴えるものがあれば幸いです。」と、一読の価値ある書だと思います。
著者の坂井三郎氏は、大正5年に生まれ、その訓練のお陰であろうか大戦を生き抜き、平成の世で天寿を全うされました。(合掌)
大空のサムライ―かえらざる零戦隊 (光人社NF文庫)PR
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